2012-04-16

数学をやりながら外の分野にも目を向けよう

今日は、大学と大学院のときの同級生で、かつて同僚でもあった友人が、非常勤講師として授業をしに訪れたので、久々にランチをご一緒した。

彼とは、昨年も「研究をやっていたら、外向きにいかないと」という話で盛り上がったのだが、今年は、特に我々がかつて学生時分に在籍していた数学で、学位取得を目指す学生さん達も、自分の専門分野に固まらず、もっと外の分野にも目を向けるた方が、自分の能力を生かす可能性が広がるのではないか、という話になった。

現在、少なくとも数学の分野では、学位を取った後の就職は厳しいものがあると言わざるを得ないだろう。大学や研究所のアカデミック・ポジションも数に限りがあるし、最初は任期つきの職から始めて、徐々にキャリアアップ、という道筋も最近はふつうのことになりつつある。

彼は、数理統計学から医療統計学の分野に移り、現在では、医学、生物学、統計学などを専門とする人達と仕事をしているそうで、その仕事の広げぶりには感心するのだが、こうした分野をまたがった人達と仕事をしていると、いろんな分野で、それぞれに必要な数学をちゃんと理解して使える人の需要が多いそうだ。お医者さんなどの場合、専門の数学は、専門の知識を備えた人に教わりながら、いっしょに仕事をする。相手の研究者は、逆に今やっている分野を勉強したり教わったりしながら、そこで自分が持っている数学の力がどのように使えるかを考える。そういう仕事の協業のスタイルらしい。

で、今日、彼が講師として授業をする対象は、今年大学院に入った修士課程1年生が中心なので、M1の学生さん達にはどうアドバイスするか?という話題にもなった。まずは、修士論文を書き上げるまでに、それぞれの分野の数学をちゃんと身につけること。それと、自分で必要な勉強を進める力も。応用分野をこの時点で無理に勉強する必要はないと思うが、いろいろな分野の話に関心を持って見聞きできるとよい。そして、修士を取ったら、D論のためのネタを探しつつ(あるいは、D論のネタとしてもありかな)、自分が興味を持った分野を勉強したり、調べてみたりする。そういう流れはどうだろうか、という話になった。これは、学生のみならず、指導する教員の方も、そういう意識をもっと高めた方がよさそうだ。

それから、もう一つ話題になったのが、応用分野の人達と一緒に仕事をする上で大切なのが、コミュニケーション能力であるということ。特に、相手に質問をしたり、アイデアを出し合ったりという意思交換を、特に数学をやっている人間は積極的にするように心がけた方がよいだろう、という認識になった。数学だと、自分で考えてアイデアが自己完結することが比較的多いような気がするが、相手と研究の話をしていて、まずは質問をするのが大事。という姿勢と言うか、雰囲気を、日頃のセミナーなどの中で育てるとよいだろう。

そんな感じで、今後の仕事の上で、いろいろと参考になる話ができたと思う。今日の話に感謝するとともに、おみやげの「いも恋」にも感謝したい。ありがとう。家でも好評でした。

さて、これから明日の授業の準備じゃ。なんとしても間に合わせねば。ではまた明日。

2 件のコメント:

智幸 さんのコメント...

そういや、以前、看護の授業を聴講するために先生に許可を貰いに行った時に、数学の院生といった時に、統計を教えて欲しいようなことを言われたなぁ~と。

まぁ、統計だと視覚障害の英書論文を読もうとした時にも、いろいろと出てきましたし。

ただ、他の分野と数学を結びつける時って、大概が統計学のイメージがあるんですよね。
(例えば、錯視だと、統計でない数学と認知心理とか脳科学とかで結びついたりするんですが。)

そうすると、他の数学をやってきた場合って、どのように他の分野(特に、理系じゃない分野)と結びつければいいんですかって感じに思ってしまうんですよね。

そんな感じなために、色んな分野に手を伸ばしてきましたが、数学と絡めようと意識したことがなかったんですよね。

Akira Terui (照井 章) さんのコメント...

知り合いの人に統計学を教えてくれと頼まれたら、とりあえず自分で適当な部分を勉強して教えるのです。
まず、その場で数学を勉強して身につける能力は、数学のトレーニングをそれなりに受けた人でないと、なかなか難しいのではないかと思います。それに、どこまで勉強すれば相手の要求に応えられるレベルになるかというのも、数学を専門的に勉強したことのない人よりは勘が働くでしょう、きっと!?
今自分が知らない数学の知識も、勉強すればそれなりに理解できるというのは、我々の世界では「ま〜そんなもんだよね」程度の認識だと思いますが、これって、外の人達からすると案外驚異という場合もあるようです。

自分が学んだ専門分野をそのまま活かせるというのは、そのまま研究者になったりしない限り、そんなにないと思った方がよいでしょう。研究者になってからも、私の友人のように、新しいことを学んで未知の分野に飛び込む人もいるくらいです。
統計学の需要が多かったというのは、もしかすると智幸さんの交流範囲に依存した話かもしれませんが、むしろ、我々の強みは、相手が出してきた問題が数学で記述されている限り、それらを(ある程度の努力で)理解し、ある程度は解決策を推論するための数学力だと思います。