2006-06-15

「フィルハーモニーの風景」から

6月13日に、指揮者の岩城宏之さんが亡くなりました。

私は、特に岩城さんの指揮をよく見ていたわけではありませんが、自分が以前入っていた市民オーケストラで、ステージマネージャー(ステマネ)という仕事に凝っていたときに、岩城さんの著書「フィルハーモニーの風景」(岩波新書、1990)を読んで、ステマネの仕事をいろいろ学んだことを思い出しました。

ステージマネージャーは、オーケストラが演奏会を開くときに、オーケストラが乗るステージを取り仕切る仕切り屋の一人です。一口に演奏会といっても、ホールの特性や、演奏する曲に合わせて、オケ(楽器)の配置を変えたりします。ステージにはたいていひな壇を組みますが、ひな壇をどう組むかとか、照明をどのように当てるかとか、指揮者やオケの意向を汲みながら、舞台上のプロデュースを行うのがステマネの仕事(の一部)です。時にはホールが狭かったり、合唱団が入ってステージがぎゅうぎゅう詰めになったり、いろいろな制約がある中で、指揮者の目指す音楽作りを最大限生かすのが、ステマネの腕の見せ所です。 さらに、本番前には、リハーサルの進行に合わせてのスケジュールの時間調整、本番では、楽屋への呼び出しや、水やおしぼりの用意など、指揮者のマネージャーとしても働きます。

私が、オケでステージの仕事を任されるようになったばかりの頃は、自分の役割がステマネの仕事だということもよくわかっていませんでした。この仕事を始めて数年経ったときに、あるきっかけでこの本を読み、この仕事の面白さを見出しました。私が携わったステマネの仕事では、合唱団をひな壇の上に全員乗せるのに苦労したり、ホールのこけら落とし以来使ったことがないというひな壇を引っ張り出したり、など、いろいろありましたが、指揮者の方々からもたくさんのことを教わりましたし、1回1回の演奏会で苦労した分、舞台が成功するたびに充実感を得ることができました。

オケでは他にもいくつかの仕事をやらせてもらいましたが、ステマネの仕事で学んだことがその後の仕事にも生かされたことがいろいろあったと思います。

ここでは主にステマネの話を書きましたが、それ以外にも、この本には、オケのオモテとウラの興味深い話がいろいろ書かれています。あと、岩城さんの本でもう1冊おもしろかったのが「楽譜の風景」(岩波新書、1983)という本で、こちらでは楽譜のオモテとウラの興味深い話をいろいろ知ることができました。 謹んでご冥福をお祈りします。

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